limbo_paradiso’s blog

狂気の淵にて君を待つ

内から外へ

今回は、2013年に「B-SIDE THE BACK HORN」と同日に発売されたシングル、「バトルイマ」についての当時のレビューのようなものです。読み返した感じ言いたいことはだいたい言い切っていたので、特に加筆なしで、当時のメモをほぼそのまま載せようと思います。


聴けば聴くほど、バトルイマ良い曲だな…ってなるんですけど世間的にはどうなんでしょう?この間のツアー*1だと、コーレスは盛り上がるけどローテンポなこともあって棒立ち聴きの人も多いかなーって印象でした。それが悪いとかではなくて、拳を突き上げて盛り上がることも、じっくり聴くこともできる、許容値の広い曲で良いな、と思った。私はかなり好きです。
くたばりはできねえ お前を待たせたまま という、意志の非常に強い歌詞に毎回胸が熱くなります。ここまでストレートに聴く側を鼓舞する曲というのはバクホンには珍しい気がしますがグループらしさがなくなってるわけではなくて、悪も毒も吸い込んで強くあれ、って全くの綺麗事じゃないところが共感できて響いてくるからすごくバクホンらしい。現時点での、バクホンなりの最大限の応援歌なんじゃないでしょうか。
そしてやはり思うのは、バクホンのシングルやアルバムにはその時期の彼らのリアルがびっくりするほどストレートに反映されているというか、一瞬一瞬が封じ込められてるような気がして、ああこの曲を作ってた時にはこういう気持ちだったんだな、こういうことを伝えたかったんだな、と想像できる上に時系列で比較できるのが楽しいということ。思考の変遷はあるけどそれでいてどこか一貫性も失っていない。
2005年リリースのシングル「初めての呼吸で」に収録されている3曲がそれまでになく生活感に溢れていたのも、ともすると突拍子もなく感じるかもしれませんが、生活をするというのはどういうことなのか、生きる上での最も身近なテーマをやっと見渡せたような、そういう時期だったんだろうな、と思えるんですよね。
震災後のリリース群は特にはっきりと思考に変化が出てきたことが分かります。震災直後に配信された「世界中に花束を」を初めとして、アルバム「リヴスコール」全体のメッセージは今までの彼らではあり得ないくらいに前向きで、悲しみを受け止めるものとしての音楽、そういった在り方をしていました。
Twitterかニコ動か忘れてしまったけど、あるコメントですごく納得させられる表現がありました。「内側の表現から外側への発信へ」。初期の楽曲が彼らの内面の初期衝動をそのまま吐き出すものだったとして、これまでも楽曲の変遷の中で外側へ向かっていくような、そういう曲があったにはあったし、2010年発売の「アサイラム」なんかはアルバム単位でそういうところを意識している感じがあったけど、「リヴスコール」は特別、悲しみを否定して空元気に勇気付けるのではなくて、皆の悲しみに寄り添って許して包み込んで、昇華していくような雰囲気がある。
ういうアルバムを作ろうとしたのも、震災があってそれを受けて色々と考えたであろう彼らの感じたリアルなんだろうと思いました。
なんだか色々と脱線してしまったけど、何が言いたかったかというと、バトルイマが今の彼らの最前線の感覚、心境なんだろうと。今までこれでもかってくらい悲しみや狂気や絶望に溢れた曲を歌ってきた彼らが、今1番表現しようと思ってできたのがバトルイマなんだと。そう思うとですね、なんて生きることに貪欲で泥臭くて前向きな曲なんだろうと、本当に勇気が出るんです。
あともうひとつ、私の勝手なイメージなんですが、THE BACK HORNというロックバンドが持っている一貫したイメージがあって。踏みしめられた土や草や花の匂い、という。遠くから眺めているだけでは、きれいなままではわからなかった、世間の中で踏みつけられて揉まれて傷付けられたからこそ香ってくる匂い。そして懐かしい故郷のあぜ道の匂い。そういうものが彼らの音楽にはある。だからこんなに聴いていて懐かしくなったり苦しくなったり、たくさん共感して、「これは私の曲だ」と思ったりするんじゃないか。私が地方出身というのもあるかもしれないけれど、メンバー4人もそれぞれ地方から集まってきてるしマツや栄純は震災のこともあって地元への思い入れが特に強くて。地方民だからこそ感じる都会との温度差や疎外感など、実に郷愁を誘う曲が多い。それを彼らがインタビューなどで良く使う表現にすると、「切ない」という言葉になるのかなと思います。
そういったことを考えながら、なんとなくバトルイマのCDジャケットを眺めていてふと感じたことがあります。バトルイマのCDジャケットって、全体の色味からすると決して華やかではないですが、弾けるような生命力のある草花の写真じゃないですか。これがなんとも、このバンドのイメージをうまく表現している図なんじゃないかと思ったのですカップリングの「雨に打たれて風に吹かれて」もまさしくそういった、雑草みたいに強く生きよう、と歌っている曲なのでぴったりだなあとすごく感心したのです。ジャケットも含めて、シングルバトルイマ、大好きなCDです。

*1:アナザーワールドエクスプレスツアー